ワインは飲み出すと歯止めがきかんからいかんね。

東京フィルメックスの目玉?かどうか知らないが、
アピチャッポン・ウィーラセタクンの「トロピカル・マラディ」を見に行く。
恐ろしく構築力のある、圧倒的な構成を持った映画だった。
音へのこだわり(そのへんのエレクトロニカなんかよりずっと周到な音作りをしていた)から、
「物語」に対する姿勢、そして何より「映画」というものをよく考え、
練られ作られた映画だった。生半可な技量の人がやったのではあの作り方ではすぐに破綻してしまうだろう。
こんな映画を作れる人間がアジアにもいるのだな、と思うと、感慨深い。
彼の旧作、「ブリスフリー・ユアーズ」や先日アテネでやっていた短編も見てみたくなってしまった。
それを思うとドキュメンタリー映画祭のリティー・パニュも見ておけばよかったかもしれない。
まったく、いつも見逃してから公開をする。ペドロ・コスタの時もそうだった。
まぁ、それが映画というものの本質だ。そもそもそれは「イベント」なのだから。
ビデオ全盛の時代に育った自分には、なかなかそれがわからなかったが・・・


しかしまぁ、最近映画にも飽きが来はじめたかな、と思っていたところだったのだが、
(というかその倦怠感の一部、「映画は所詮何をやろうと映画なのだ」(だからこそ素晴らしくもあるのだが)はいまだに残滓としてあるが)
やはりこういうものを見ると、純粋に良いと感じるし、また映画館へ足を運ぼうと思ってしまう。
全く、人生は統一的には行かない。



寄せては返し、寄せては返し・・・(光瀬龍百億の昼と千億の夜